<後編>“考える防災”という文化を、マンションから街へと広げていく

「考える防災」を広げる三菱地所レジデンス。様々なツールの開発だけでなく、考える防災訓練も長年続けています。すべては住民一人ひとりが自分ごととして被災時を想像し、行動できるようになるため。そしてその挑戦は、分譲マンションから賃貸マンションさらには街全体へと広がっています。
(前編はこちら)
目次
- 楽しみながら防災に触れる
- 「考える防災訓練」を続けていく
- 隣近所を知らない賃貸こそ重要な備え
- 被災して困る人を一人でも多く減らしたい
楽しみながら防災に触れる
工藤
「そなえるカルタ」のほかに、「そなえるドリル」というのもあるんですね。
平澤
「そなえるドリル」は、子どもたちがどうやったら防災に興味を持ってくれるかを考えてつくったツールです。子ども用につくったつもりなのですが、おとな向けのワークショップで使用しても皆さん楽しそうにやってくださいます。
工藤
確かに、考えさせられる内容で面白いです!

平澤
そうなんです。非常食を考えてもらうにあたっての質問として、ドリルの中で「昨日の3食、なに食べたっけ??」というところがあるんですね。参加者が「そんなの覚えてないよ」って笑い合いながら考えてくれています。
ほかにも避難生活を考えるための質問として、「無人島に何もってく?」というのがあります。「お薬を持っていく」と答えてくれる方もいるのですが、「それだけじゃなくて、おくすり手帳も持っていってくださいね」って伝えたりします。
工藤
考えていくうちに自然と防災のことも想像していると。
平澤
はい。子どもが楽しめるような問いから始まり、一緒に見ていくうちに親も一緒に引き込まれる面白いツールです。
「考える防災訓練」を続けていく
工藤
お話を聞いていますと、「そなえるカルタ」も「そなえるドリル」も受け手にとって考える余地がありますよね。余白があるというか。
澤野
そうなんです。そこを大事にしてつくりました。災害時にお客様(マンションの住民)が自ら動けることを目指して防災の取り組みをしています。大きな災害が起きた時に管理会社も私たちも被災しているのですぐには行けないんです。 なので、平常時から訓練をしたり、「そなえるカルタ」と「そなえるドリル」を活用したりしてお客様に考えてもらうきっかけをつくっています。

平澤
カルタとドリルというツールはありつつも、一番の柱はやっぱり防災訓練なんですよ。被災した状況を想定しながら訓練しましょうというのが1つの特徴です。
工藤
具体的にはどういったことを?
平澤
防災備品を実際に使えるように、ということを意識しています。防災倉庫の中で段ボールに入ったままだと、被災時に「これなんだろう?」から始まりますよね。例えば、被災地でトイレに困ったという話をたくさん聞きましたので、マンホールトイレの組み立てをしています。
澤野
組み立てをするだけじゃなくて、敷地内には雨水や汚水など様々な用途のマンホールがあります。実際に設置するマンホールの蓋を開けて、設置場所の確認もしています。
平澤
訓練の中で、「みなさんどのくらい備蓄していますか?」という質問をさせてもらっています。水は100人参加者がいたら90人くらいの人が備蓄しています。非常食もそれに近いくらいの人が備蓄しています。ですが、簡易トイレはどうですか?と質問すると、備えている人は少なく、また、トイレを備えている方に、凝固剤の数を聞くと10個ですという答えがかえってくることもあります。「1日何回トイレ行きますか?何人で過ごしていますか?」と聞いていくと、1日で使い切る量だと気づきますよね。ご自身で考えて気づいてもらうことを大切にしています。


工藤
災害時に住民が自ら動けるように、という意識が徹底されていますね。防災訓練の参加率はどれくらいですか?
平澤
安否確認シートを玄関に貼る訓練も実施していますが、2割程度の場合もあれば、8割以上の参加率の物件もあります。シートを貼るだけではなく、実参加も伴うと3割4割くらいですかね。先週末ちょうど、190戸のマンションで防災訓練をしましたが、100人以上の参加者でした。
隣近所を知らない賃貸こそ重要な備え
工藤
参加率が高い印象です。防災訓練は分譲マンションだけで、賃貸マンションでは実施されていないですか?
平澤
賃貸の物件でも防災に取り組んでいます。賃貸はお客様の入れ替わりもあるので、賃貸マンションでも災害時に助け合えるツールを導入しています。
澤野
First Mission BoxⓇ※1(以下、FMB)というツールで、まずは発災直後の初動に特化したものです。賃貸のマンションは、管理組合がないですから災害が起きた際に音頭を取る人がいないです。そもそもマンション内に顔見知りも少ないですよね。私も賃貸マンションに住んでいますけど、隣近所の方わからないです…。
工藤
賃貸マンションだと、どこに防災備品があるか、そもそもあるのかどうかも知らないですよね。
平澤
停電したら水が停まることすら知らないと思うんです。トイレに入って用を足して流れないというところで異常に気づくと思うんです。そういう方たちがマンションの一階ラウンジに来て、FMBを見つけることで共助が始まります。このツールの特徴なんですが、最初にFMBを開けた方が災害対策本部長としてマンション住民の音頭をとる立場になるんです。

工藤
誰かが音頭をとる必要があって、それをまず最初に決定してしまうのはその後の動きがスムーズになるんでしょうね。住民同士の関係性が醸成されにくい賃貸のほうが、こういったツールが活躍しそうです。
平澤
その通りです。FMBの内容も、各地の被災地で聞いたことをもとに「実際に被災地で困ったこと」から考えてつくっています。
工藤
FMBを使った訓練もされているんですか?
澤野
実施した経験があります。分譲マンションに比べたら参加者は少ないですけど、それでも関心のある方々が参加してくれています。
印象に残ったのが、「災害時になにかあったら、FMBを開けてくださいね。はじめに開けた方が本部長ですよ」というのをお伝えしたんですが、「地震が起きたら私が開けたいと思います」と言ってくれた住民がいました。
被災して困る人を一人でも多く減らしたい
工藤
ここまで、ツールだったりマンション防災について聞いてきましたが、ほかにも防災で取り組まれていることはありますか?
澤野
そうですね、エリア防災=街の防災にも取り組んでいきたいと考えています。千葉県習志野市津田沼奏の杜エリアでは、地域で助け合うために10年間かけて複数のマンションや公共施設・商業施設などを含めた活動をしていますし、東京都中央区にあるザ・パークハウス 晴海タワーズという分譲タワーマンションでは、隣り合う2棟合同で訓練をしてエリア防災力を高めています。管理組合が主導でやっていますので、私たちは訓練のサポートをさせていただいています。
平澤
ザ・パークハウス 晴海タワーズの近くには他にもマンションがあります。災害時に地域で助け合うために、周辺のマンションにも声を掛けて訓練を実施できるといいなと思います。
工藤
周辺のマンションと合同でもできるといいですね!すごく先進的です。被災したら街全体で助け合わないといけないですもんね。
澤野
まさにそうです。街の中から1人でも被災時に困る方を減らしていきたい。災害に強いまちづくりが広がっていけばいいなと。
工藤
ますます防災に尽力されると思いますが、今後の展望としてはいかがですか?
平澤
困っている人をいかに少なくしていくか、そこが使命です。デベロッパーとしては、ハードを用意してそれで終わりとはいかないだろうと考えています。
澤野
目の前にいる大切なお客様を守りたいということで、2023年度下期以降の引き渡しから、すべての物件で防災訓練を管理組合にご提案しています。お客様自身が考えるきっかけをこれからもつくっていきたいです。
平澤
被災した時に、自分が助かったら、自分の家族が助かったら、周りの困っている人を助けてそれが街へと広がっていく。そういう姿が理想ですね。そこに向かって、防災の取り組みを続けていきます。

***
前後編にわたってお届けしてきた、三菱地所レジデンスの“考える防災”の今。一人でも多くの人が、この輪に加わるきっかけとなりますように。
※1 First Mission BoxⓇは、長野県飯田市と株式会社危機管理教育研究所により考案されたものです。
そなえるカルタについてはこちら▼
そなえるカルタ|ザ・パークハウスの防災プログラム| 三菱地所レジデンスザ・パークハウスの防災プログラム。有事に際してより実効性の高い、自主的な行動促進を考えた防災プログラム。 そなえるカルタ。www.mecsumai.com
そなえるカルタのダウンロードはこちら▼
